『太一〜UFOに乗った少年』Blog

宝生明のファンタジー「太一〜UFOに乗った少年」と現実

『太一〜UFOに乗った少年』 エッセンス

湘南、烏帽子岩を舞台に展開される
壮大なスピリチュアルファンタジー。
読み出したらワクワクが止まらない。

 

 

 

UFOは単なる宇宙人の乗り物ではなく、霊的なものであり、
さらに言えば、歴史上すでに登場したものだと思うのです。
過去の人々はそれを神だと思って見ていたでしょう。
宝生 明

 

 

 

少年のときめきを絵にしたような小説。
NHKの少年ドラマシリーズを思い出した。
第一章を読み終えるあたりからワクワクして、
もう中断できなくなった。
最後は読み終えるのがもったいなかった。
こんな作品が生まれる時代を僕らはずっと待っていた。
スピリチュアルTV主宰 小泉義仁氏

 

 

 

小説より抜粋

 

「UFOって本当にあるのかなぁ?」
太一が唐突に聞くが、クサじいは落ち着いた雰囲気でその質問に答える。
「うむ、それは微妙だな」
「微妙?」
「太一、波はあるか?」
「波があるか? 目の前に波は立っているじゃないか」
茅ヶ崎の浜辺にはいつもと変わらず、サーファーにとって心地いい波が立っていた。
「あの波は水であって、波が『ある』訳ではないのではないか?」
太一はクサじいが何を言っているのかよくわからなかった。
「サーファーたちが乗っている波は水の運動状態であって、波という物体がある訳ではない。特定の運動状態を水がしているとき、それを儂たちは『波』と呼ぶ。それは存在する物ではなく、特定の状態だ。存在しているのは水だけだ」
「ああ」
「ところが儂たちはそこに『波がある』と思いこんでいる。波があるのではない、水があり、それがある特定状況にあるとき、それを『波』と呼んでいるに過ぎない。つまり『波』はそこに存在するのではない。水が存在し、その運動状態を『波』と呼んでいる。UFOも同じようなものだ。もっと言えば『生命』も同じだ。原子がある規則にのっとり整列し、脈動を吹き込まれることで生命になる。同様にUFOは存在するのではない、現象として現われるのだ」

 

 

午後一時、厚木航空基地から連絡があり、烏帽子岩上空に未確認飛行物体が現われたと連絡を受けた。すぐに発進して大磯上空で待機する。ブラックホークのレーダーはすぐに未確認飛行物体を捉えたが、あまりにも速度が速く、あちこちに方向を変えるのでときどき見失った。次第に近づき、目視できる距離になったとき、右に左に上に下にと移動していくので、はじめのうちは目の錯覚のようにしか感じられなかった。ところがはっきり見えるくらいに近づくと、確かに光った物体があちらこちらと踊るように飛行している。動画撮影も静止画撮影も、ズームインするとそのスピードのためフレーム内に収められない。ズームアウトすると光が小さくなって、あまりよく写らない。ふと気づくとブラックホークのすぐ横に光が止まった。ブラックホークよりひとまわり大きかった。乗員がそちらを向くと、光は正面に移動し、フラッシュのような強い光を浴びせてどこかへ消えた。レーダーで確認すると、すでに五キロほど離れていた。

 

 

小学校で給食の時間になり、マスオは割烹着を着て給食を配っていた。すると隣のクラスにドヤドヤと五、六人の黒いスーツにサングラスの男たちがやってきて、真樹を捕まえて行こうとする。太一はその様子を見て、大声でマスオを呼んだ。
マスオが廊下に出て行くと、三人の男たちが真樹を抱えて廊下を走っていく。太一が止めようとするが他の男たちにさえぎられてどうしようもない。男たちの何人かは白人のようだった。先生を呼びに行く生徒もいたが、あっという間でどうしようもなかった。男たちは昇降口そばに止めてあった黒い車に真樹を押し込み走り去った。

 

 

「相手は軍隊だぞ。儂たちの命と人類全体の利益を考えれば、儂たちのことを隠蔽するためにどんなことでもするぞ。それにこれから儂たちがするべきことを失敗したら、どの道生きてはいられない。名誉の回復はあとでもできる。これからすべきことはこの三日のあいだにしなければならないのじゃ」

 

 

スクリーンが出され、そこにククのブログが投影された。真樹が朝に書いた書き込みにコメントが何百とついていた。順番に読んでいくと、はじめのうちは応援のメッセージだったが、次第に様々な提案のコメントになっていった。
「感動しました。英語に訳してもいいですか?」
「英語に訳してこちらにアップしました」
「具体的には何をしたらいいですか?」
「次の書き込みを待っています」
「メーリングリストにここのURLを流しました」
「フランス語訳をこちらにアップしました」
「私たちがするべきことは、きっと祈ることだと思います。祈り合った上で、きっと一緒に何かをするのでしょう。UFOを飛ばすために何をすればいいのでしょう?」
「スペイン語訳をこちらにアップしました」
「中国語訳をこちらにアップしました」
「インドネシア語訳をこちらにアップしました」
「FMニッポンです。翌朝の電話インタビューに答えていただくことはできますか?」
「七月三十一日は明後日です。何をすればいいのか至急こちらに書いて下さい」
「こちらのブログだけではパンクする可能性があるので、転載させてもらいます」
「私のブログに転載しました」
「メールマガジンにここの情報を流しました」
「ライトピラーに会いたいです。どうすればいいですか?」
この書き込みくらいまでは良かったが、次の書き込み以降はヒステリックにコメントが増えていった。
「もしかして、小学校で誘拐されたというNくんとここの『マサキ』さんは同一人物ではないですよね? この書き込みが理由でメン・イン・ブラックに捕まったとか?」
スクリーンを見て再読み込みをする度にコメントは増えていった。そしてついにククのブログにつながらなくなった。

 

 

「恵子、実は昨晩、太一に変なこと言われた」
「変なこと?」
「ああ、UFOに乗ったっていうんだ」
「まさか」
「あり得ないよな。だから、そんなあり得ない話するなって言ったんだ。ひょっとして今晩いないのはそれが関係しているのかな?」

 

 

「もしもし、健か?」
「そ、だよ」
「いまどこにいるんだ?」
「いますごいことになってる」
「何が?」
「内緒だけど、実は、昨日、僕、UFOに乗ったんだ」
一博は驚き、黙ってしまった。
「もしもし、父さん。ついにUFOに乗ったよ」
「ほ、本当か?」
「本当さ。それで、いま、アメリカの軍隊と自衛隊とに協力して、いろいろとしなきゃならないことがある。だから、今晩は帰れない」
「そ、そうか」
「父さん……」
「なんだ」
「父さんのかたきを取るからね。世界中の人たちがUFOは飛んでいるんだって信じられるようにするから。これで父さんはパイロットに戻れるよ」

 

 

「ニュース・オメガ」のテーマ曲が流れ、飛谷志郎が画面に映された。
「おはようございます。いつもですとこの時間は寝ているんですけど、昨日入ったニュースを今朝、生でですね、伝えるために、スタッフ全員徹夜で準備いたしました。それほど驚くべきニュースをこれからお伝えいたします。もし私たちが調べ上げたことが真実であるなら、今日、そして明日は歴史に残る日になるかもしれません」

 

 

「ここで今日のゲストをご紹介いたします。『まだ見ぬ日』『空蝉』などで有名な作家の小口民雄さんです。今日はありがとうございます。今回のこの事件、謎が謎を呼んでいる、そしてもうすぐ記者会見ですが、どう思われますか?」
「UFOと瞑想ですよね。そうなると最初に思い出されるのはヘブンズゲートですね。一九九七年のヘール・ボップ彗星接近の際に集団自殺をしました。宇宙船に魂を乗せるために肉体から魂を解き放ったということらしいですが、恐いですよね」
「ああ、思い出しました。みんな同じ金額のお金をポケットに入れていたんですよね」
「はい、五ドル札と二十五セント硬貨ですね」

 

 

信心深い人たちは太一たちが見たライトピラーを、長い間信じてきた本物の神だと考えた。神の秘蹟がおこなわれ、その神が「人類の利益を考え、愛を持って人を助けなさい」と言われたのである。多くの人々がそれに従おうとした。

 

 

宇宙から見た地球は、鼓動する心臓となった。

 

 

意図的で平安な、愛で満たされた静寂。

 

 

地球全体がそれまで体験したことのない満足や幸福感に包まれた。

 

 

 

UFOスピリチュアルファンタジー烏帽子岩

editor • 2014年2月14日


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